恋愛 スタディ

女の勘

「健斗……」

何とか言葉を返す健斗だが、その様子はどこか落ち着きが無く、そんな様子を正輝は心配そうに見ていた。

すると、いつのまにか注文されていた生ビールが千尋の元へと運ばれる。

千尋はそれを一気に飲み干すと、乱暴にグラスを置いた。

「君も免許を取りに行きたまえ」

少しヤケ酒気味になってきた千尋の言葉に、健斗は悩む。

運転免許は就活を始めるまでに、取得しようと思っていたのだが、今の健斗は実家からの仕送り生活だ。

免許取得の為のお金を捻出する術は無い。

「そんなお金、すぐには用意出来ません」

健斗は少し落ち込んだように言った。

空のグラスを亜美に渡していた千尋は、健斗に優しく話しかける。

「アルバイトをしたまえ。夏休みまでまだ２か月ちょっとある。日雇いや短期のアルバイトをこなせば、間に合わない事もない」

その言葉で健斗は思考を凝らす。

今までは進学校に通い、高校では規則でアルバイトが禁止されていた為に、そういう発想に至らなかったのだ。

そしてこの飲み会の帰りに、早速求人誌を買い、アルバイトをする決意した。