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そして現在に至る。
相変わらず、カップルは健斗のが居るにも関わらず、痴話喧嘩を繰り広げていた。
「浮気相手にこれをプレゼントでもするつもりだったんでしょ」
女は変わらず、綺麗にラッピングされた小物を男に突き付けていた。
「だから話聞けよ。これはお前へのプレゼントだよ」
「えっ……」
予想だにしない男の言葉に、女は気の抜けた表情をしていた。
男はため息をつくと、優しく話しかける。
「最近転勤の準備でバタバタしてて、会う時間が無かったからな。それにこれから遠距離になるんだし。何かプレゼントしたくてな」
「あ……有難う。開けてもいい?」
散々問い詰めていた女は、バツが悪いのか、か細い声で問いかける。
「ああ。開けてみろよ」
男の言葉で女はラッピングを丁寧に取り、中からプレゼントの品を取り出す。
「わぁー、口紅だ。有難う」
「喜んでくれて何よりだ。作業に戻ろうぜ。風呂場の物、全部捨てるから頼んでもいいか?」
「うん。任せて」
女は気分が良くなったのか、軽い足取りで風呂場に向かった。
男はやっと落ち着きを取り戻し、安心した表情で作業に戻る。
どうして良いのか分からなかった健斗も、何とか騒ぎが収まり、作業に集中し始めた。
しかし、風呂場の方から、足早に女が戻ってくる。
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