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目の前で繰り広げられる痴話喧嘩に、健斗は作業の手が止まり、呆気にとられている。
そして女の勘って一体なんなんだと、思考を凝らしていた。
すると、痺れを切らしたのか、男は更に声を荒げ始める。
「あーもう。分かった認めるよ。浮気してるよ。その口紅だって浮気相手へのプレゼントだったんだよ」
男は罪を認める供述をし始める。
開き直った男を見て、女は益々怒り狂ってしまう。
「やっぱりそうじゃないの。ふざけんな。いい機会よ。遠距離恋愛なんてしないわ。今日であなたとは別れます。さようなら」
そういうと女は自分のバッグを手に取り、凄い勢いで部屋を出て行く。
「あーくそ。何だよあいつ」
男は女が出て行った姿を確認し、悪態をついた。
健斗は今目の前に起こった出来事を、メモする事が出来ず、忘れないように頭の中で何度も繰り返し、記憶に焼き付ける。
そして気まずい空気の中、作業を終わらせると、鞄の中にあった適当な紙にメモを書き出していた。
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