女の勘

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健斗と正輝は頷くと、適当に椅子に腰かけ、亜美が淹れてくれたコーヒーを受け取る。 するとコーヒーの匂いに気づいた千尋が、健斗達の方を振り向いた。 「亜美君。コーヒーおかわり……君達来てたのか」 そう言うと、亜美がコーヒーを淹れてくれるのを心待ちにしているように、少しソワソワしている。 どれだけコーヒーが好きなんだろうと、健斗は千尋の可愛い一面を見て、少し笑ってしまう。 そんな健斗の様子に気づく事もなく、千尋は亜美からコーヒーを受け取ると、一口飲み、口を開いた。 「君達、そんな頻繁に顔を出さなくてもいいんだぞ。特に健斗君、君は時間があればバイトしなければならないだろう」 いつも毅然とした態度の千尋が、時折見せる優しさに、健斗は少しドキッとしてしまう。 「大丈夫ですよ。無理なくやってますので。それより今日は研究事案の報告がありまして」 健斗はそう言うと、鞄から昨日メモした紙を取り出した。 「珍しいなぁ。君から報告なんて」 千尋は亜美に視線を送ると、すでにホワイトボードの準備をし終えた姿が見える。 「では報告を頼む」 健斗は初めての報告に、少し緊張しながらも、昨日あった事を出来るだけ細かく説明し始めた。 「……という事があったんです」 健斗の説明と同時に、亜美も板書を終える。 すると千尋は、何かを考えながら、コーヒーを一口飲んだ。 「それで、君達は女の勘について知りたいと?」 「はい。現場で見ていた感想なんですが、男が言っているように疑い深いだけなんじゃないかと。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるみたいな」 健斗は女性2人を前にし、失礼な事を平気で言ってのけた。
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