女の勘

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その事を発言後に気づいた健斗は、恐る恐る千尋と亜美の様子を見たが、別段怒った様子は見られなかった。 健斗は安心したように深く息を吐く。 その様子を見た正輝は、自分が抱いた考えを千尋にぶつけた。 「女性ってちょっとした変化に気づくじゃないですか。亜美さんが俺が髪切った事に気づいたように。健斗は全然気づかなかったんですけどね。それと何か関係があるんじゃないでしょうか」 その言葉を聞いた千尋は口を開く。 「前にも言った通り、女は察して貰い、察してあげる女性社会で生きて来た為に、男より観察力があり、少しの変化も気づきやすいのだろう」 それだけじゃないがな、と言いながら千尋はホワイトボードに近づくと、ボードを回転させ、真っ白な裏面に切り替える。 そして黒のマーカーを持ち、絵を書き始める。 3人はしばらくホワイトボードを見ていると、そこには人間の脳らしき絵が2つ描かれていた。 そして書き終わった千尋は、説明スイッチを入れながら口を開く。 「男性と女性の脳の働き方には違いがある事が近年、海外の研究チームが、MRIを使用した研究によって明らかにされました。ここに書いている通り、人間の脳には右脳と左脳があります。そして男女別に働き方が違う事が分かりました」 そう言うと千尋は2つの脳の絵それぞれに、男、女と書く。 「男の脳は右脳なら右脳、左脳なら左脳とそれぞれの個別領域での動きが活発で、特に小脳の運動技能がより顕著でした。そして脳の前部と後部の接続がより強く、情報を素早く理解する事が出来、複雑な作業を行う事に適しています。スポーツの技術習得や、車の駐車など、男性が秀でているのはその為かもしれません」 説明しながら、千尋は男の方の右脳、左脳の前後を繋ぐようにいくつか線を引く。 「そして女性ですが、右脳と左脳の接続が格段に強く、人の顔を覚える事に長けています。例えば、集団の中から目的の人物を探し出したり、偶然出会った知り合いを見て、この人とはどこで知り合ったのか、最後に会ったのはいつか、など脳の幾つものネットワークが必要な能力に秀でています」 そして千尋は右脳と左脳を繋ぐようにいくつも線を引く。
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