結婚式 

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そのテーブルが何個も設置され、各テーブルには、スーツ姿の男達と、ドレス姿の女達が座っている。 そして会場の正面、一番奥には、タキシード姿の男と、白いドレス姿の女が幸せそうにしている。 健斗は、式場の短期アルバイトスタッフとして、料理配膳の職務に励んでいた。 空いた皿を下げに回り、次の料理を運ぶ。 そしてドリンクの注文を受け、それを届ける。 意外と暇が無い。 忙しなく動き回っていると、式も中盤に差し掛かる頃、健斗は空き時間を見つけ、トイレへと向かった。 「結構忙しいな」 1人愚痴をこぼすと、トイレを済ませた健斗は、会場へ戻ろうと廊下を歩き出す。 すると途中、携帯を片手に、誰かと通話している招待客であろう女性の姿が目に飛び込んできた。 「そーなんだよね。あと1時間ぐらいで終わると思うから、迎えに来てよ。え?二次会はさすがに行かないよ。明日も朝早くから仕事だし。疲れちゃった。早く帰りたい」 不可抗力ではあるが、女性の話を盗み聞きしてしまった健斗は、少し気まずくなり、女性に姿を見られないように、遠回りをして会場に戻る。 健斗が会場に戻ると、会場の証明は薄暗くなっており、会場正面の左右の角に設置された、大型のスクリーンに、映像が流れていた。 式の序盤には、新郎新婦の生い立ちスライドショーが流れていたが、今流れているのは、招待客の男性数名が作成したと思われる、コント仕立てのドラマ風な映像だった。 健斗はそれを見ていると、段々と寒気が襲ってきて、全身鳥肌がたってくる。 その映像は学生ノリ、内輪ノリという言葉がピッタリと当てはまり、笑うに笑えず、この映像が見えない場所へと、逃げ出したい衝動に駆られた。 しかし従業員としてこの場に居る健斗は、逃げ出す訳には行かず、必死で別の事を考えながらやり過ごそうとする。 そしてドリンクの注文が無いか、会場を見渡すと、招待客の様子を観察し始めた。 新郎、新婦に近い席に座っている客は、きちんと映像を見ており、時折、笑いどころと思われる所では、きちんと笑っている。 何故こんな物で笑えるのかと、健斗は不思議に思い、集中力を高めて観察する。
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