結婚式 

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すると招待客の数名は、健斗でも見抜ける程の造り笑顔だった。 それを見た健斗は、先ほどの盗み聞きした女性を思い出す。 『早く帰りたい』という言葉が、何度も脳内再生していた。 その言葉を胸に、会場の客を見渡すと、欠伸を必死に我慢していたり、ひたすら酒を飲んでいたり、煙草や携帯を手に、席を立ったりする者が、数名見受けられた。 その様子を見た健斗は、招待客は喜んで参加している訳では無いのかもしれないと思い始めた。 健斗は、これまでの人生で、結婚式といものに参加したのは、小学生の時だけだ。 親戚の結婚式で、普段食べる事が出来ない、オシャレな料理が出され、夢中になって食べていたが、それ以外は退屈でしかなかった記憶がある。 それはまるで、学校で行われる入学式や卒業式。 全校集会での長い長い話を聞かされているようで、苦痛すら感じられた。 何故、ただ長い話を聞く、無駄な時間を過ごさなければならないのかと、疑問すら抱いていたが、結婚式等の式典での、忍耐力を鍛える為の物だったのかもしれない。 そのような事を思考していると、いつのまにか映像は終わってしまい、健斗は慌てて次の料理を運び出す。 こうして式は順調に進行していき、無事に終わりを迎える。 会場の片づけをする為に、去って行く招待客を見送っていると、客同士の会話が聞こえてきた。 「良い結婚式だったね」 「そうだね。私もこんな式がしたいな」 女性2人の会話を聞きながら、健斗は自分も少なからず関わった式に、満足して貰えた事で嬉しくなる。 その後も招待客を見送っていたが、様々な声が聞こえてきた。 「疲れたわー。高い祝儀払って、時間まで拘束されるのはきついって」 「二次会、盛り上がるぞー」 「良い女と知り合えねぇかな」
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