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「二次会どうする?」
「俺、このメンツとはあんまり仲良くねぇからパス。帰るわー」
様々な言葉を残しつつ、招待客が全員居なくなった会場を、健斗は片づけ始める。
健斗の他にも、数人のスタッフが会場を手際良く片づけていた。
そして作業が進み、最後の1つとなったテーブルを片づけ始めると、この現場を仕切っていた、30歳前後の正社員の男性が近づいてくる。
「お疲れ様。これで最後だね。あと少しだから頑張ろう」
気さくに話しかけてくれる男性に、健斗は笑顔で返事をする。
今回のバイトは、人間関係も比較的良く、当たりだと思った。
そして健斗は、今日の仕事を通して抱いていた疑問を、この男性なら聞き易いと感じ口を開く。
「あの。聞いてもいいですか?」
「ん?なにかな?」
男性は作業をしながらも、優しい口調で返事をしてくれる。
「結婚式に出席する人って、皆が皆、喜んで出席しているわけじゃないんですかね?」
健斗の質問に、男は少し苦い顔をする。
「君もそんな疑問を持っちゃったか……」
男が発した『君も』という言葉に、健斗は気になりながら首をかしげる。
「君のような20歳前後のバイトの子は、結婚式に華やかなイメージを持っていてね。良い印象しか抱いていない子も多いんだ」
そう前置きをすると、男は苦い顔を保ったまま話を続けた。
「ドラマやワイドショー何かでは、華やかな部分しか出さないからね。招待される方は決して安くない祝儀と、貴重な休みを犠牲にしてまで出席しなきゃいけない。皆大人だから口や態度にはあまり出さないけど、本音は面倒だと思っている人も多いと思うよ」
「そ、そうなんですか……」
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