それは唐突に。

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大きく息を吸い込んで、お腹の底から大声で叫ぶ。 「何、彼女って!あたしがいるのに!この16年、あたしの全部をいっちゃんに捧げてきたつもりなのにぃ!いっちゃんは他の女を選ぶの!? 朝とかっ、いっちゃんは寝坊してご飯食べる時間のない日が度々あるから、あたしのカバンの中にはいつでもあげられるようにいっちゃんの好きなチョコ味のカロリーメイトが常備してあるし? 学校ではっ、授業中いっちゃんの居眠りがバレないように先生の注意をいっちゃんから反らすのに徹底してたし!おかげであたしの授業態度は最低ランクだけど、いっちゃんのためなら痛くも痒くもなかったもん! 他にもっ、部活動に専念したいって言ったいっちゃんのために、あたしはマネージャーでもないけどサッカー部の部室を週に一回掃除して、グラウンド整備して、ボール磨いて、部活が終わったいっちゃんにタオルと飲料渡して……まあそれはかなり楽しかったけど! 夜には、忘れっぽいいっちゃんのために、翌日の準備はきちんと済ませたか確認メールを送ったり! あとあと、いっちゃんに悪い虫が付かないようにそれなりに牽制してきたつもりなのに~!!」 それなのに……。 本多さんはいっちゃんに告白しちゃうし、いっちゃんはOKしちゃうし、一体何なの? 報われないって、まさにこのことじゃないか。 あたしはこのどうしようもない苛立ちを解消させようと、ケータイを取り出して、メールを作成する。 今思っていることをそのまま書き綴った。 そして内容を確認せず、送信ボタンを押す。 送信完了しました、との文字が画面に表示されるのをぼんやり眺めながら、あたしの瞳からはポロポロと何かがこぼれだした。 ……涙だ。 あたし、泣いてるんだ。 コンクリートの地面にできる涙のシミは、次第に増えてゆく。 いっちゃんの、バカ。 バカバカバカ。本当、バカ。 いっちゃんのこと、こんなに思ってる女の子が近くにいるのに、違う子に走るなんて。バカだよ……。 「う――っ!!」 あたし、告白もしてないのに、ふられたんだ……。
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