それは唐突に。

12/12
前へ
/86ページ
次へ
心の友ことなっつーは、2年くらい前にインターネットでたまたま知り合った2つ年上の女の子だ。 お互い顔も本名も知らない。 こうしてメールを送り合うだけの関係だけど、あたしはなっつーにだけは本当のことを話せている。 幼馴染みのいっちゃんが好きなこと、それを周りの人には言えずにいること。なっつーは、たくさんの悩みをぶつけられる、唯一の相談相手。 2つ年上ということもあって、なっつーの言うことは大人っぽくてためになる。時々、冷たいけど。 あたしは早速、今朝の出来事をまとめ、なっつーに送った。 本当はメールじゃなくて電話とかで話したいけど、なっつーはあたしの話は長くて鬱陶しそうだから、との理由でケー番を教えてくれない。 こういう時こそ、なっつーの声を聞いて励まされたいのに。 ……なんて、あたしのワガママかな。 なっつーのおかげで涙は引っ込んだけど、心はまだ、どうしようもない鈍痛に見舞われている。 あたしは空を見上げて、いっちゃんの笑った顔をそこに思い浮かべた。 ――ねえ、いっちゃん。 もしもあたしが本多さんより先に告白していたら、いっちゃんの選択はどうだったんだろう。 あたしは、いっちゃんと付き合えていたのかな。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加