それは唐突に。

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……あれ。おかしいな。 いっちゃんの口から出てくるはずのない単語が、何だか聞こえたような気がした。 「……ごめん、いっちゃん。もう一回」 「お前さあ、何度言ったら分かるわけ!?もう10回くらい言ってんぞ!」 「彼女?本当に彼女ができたの?いっちゃんの妄想じゃなくて?」 「あほか!残念ながら事実ですー!」 あたしは、夢でも見てるのでしょうか。 いっちゃんの夢の話じゃなければ、どうやらあたしが夢を見ているらしい。 いっちゃんに、彼女ができるなんて。 ……夢でもありえない。 「いっちゃん、引き返すなら今のうちだよ?今白状すれば、怒らないから」 「嘘じゃねーし!」 「男にはね、潔く負けを認めなきゃいけないときがあって……」 「だから嘘じゃねーよ!」 もう、何が何だか。 嘘か夢かの二択しか、あたしの頭の中には存在しないのに、いっちゃんの主張はそのどちらもを否定する。 いっちゃん、頭おかしくなっちゃった? 元からおバカだったけど、頭でも打ってさらにいかれちゃったのかな。
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