それは唐突に。

5/12
前へ
/86ページ
次へ
「いいかー、よく聞け瑛弥(えいみ)。俺は昨日、なんと同じクラスの本多理紗(ほんだりさ)にコクられた」 「本多さん……?いっちゃん、もうちょっと現実味ある嘘にしてよ」 「おう、俺も初めは冗談かと思った。だが違った!正真正銘、真剣交際の申し出だった!あの本多理紗が!俺に!」 やっぱり頭おかしいよ。よりにもよって、本多さんなんて。 あたしたちと同じクラスの本多さんは、誰がどう見ても綺麗な人で、間違ってもいっちゃんなんかに告白するような人じゃない。 「で、俺は本多理紗と付き合うことにしたから、明日からは朝一緒に行けねーや。悪いな」 明日から、いっちゃんと一緒に登校できなくなる……? なにそれ。 悪いって謝ってる割に、いっちゃんは嬉しそうだ。 「明日から、本多さんと一緒に行くの?」 「おー」 「……ふーん」 「ハハ、マジごめんなー!お先に彼女作っちゃってー」 「……」 分かっていた。 あたしはいっちゃんにとってただの幼馴染みで、まったく女扱いされてないことも、分かっていたけど。 いっちゃんの近くにいる女の子はあたしだけだったから、油断してたんだ。 いっちゃんにあたし以外の彼女ができるなんて、夢にも思わなかった……。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加