それは唐突に。

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「あ、そだ瑛弥!壱也くんに彼女ができたことを祝って、今日クラスのみんなでカラオケ行こうよ」 「いいじゃんそれー!サプライズで何かやる?」 「だったら盛大にやりたいよね!……瑛弥は?何か希望とかある?」 クラスメイトがあたしに話を振ってくれるけど、正直、いっちゃんに彼女ができたこと、素直に祝えるわけがない。 ちらりと横目で盗み見たいっちゃんは、本多さんと楽しそうに笑い合ってた。 頬を染めて、幸せそうに。 あたしのことなんて、見向きもしない。 ……胸に、重たい鉛が沈んだみたいだ。 「……ごめん、みんな。ちょっと頭痛い。保健室行ってくるね」 「えっ、大丈夫か?瑛弥」 「私着いてくよー?」 「……ううん、一人で大丈夫だから」 早く、教室を出たかった。 いっちゃんとその彼女がいる場所から、逃げたかった。 だってこれ以上二人を見てたら、あたし……。 足早に向かったのは保健室でなく、屋上。ここなら誰もいないだろうから。 扉を開けると同時にチャイムが鳴る。 キーンコーンカーンコーン…… 屋上に一歩踏み出したら、もう我慢できなくなった。 あたしの中で何かが弾けた。 「いっちゃんの、バカ野郎――――っ!!」
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