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「何で?……だって彩花は………」
「もう中学生だもん。
前へ………前へ進まなきゃ……
パパやママ。
みんなの為に私は前に進みたい。
だからやってみる。
私、もともとは水泳得意なんだよ」
ニコリと僕に向かって笑顔を見せたけど、すぐに不安そうな表情に変わった。
「でも……やっぱり怖いな………
翔大、手伝ってくれるよね?」
(もちろん!僕は何時だって彩花の味方だ!!)
そう思いながら無言でうなずくと、彩花が安心したように溜め息をついた。
「でもさあ、何で中学一年の夏休みなの?」
酔っ払ったマヤさんの声が響いた。
中学一年の夏休み初日にダイブする理由を皆に尋ねているようだった。
「知るか……んなもんは昔からの決まりだ」
爺ちゃんが言うと、百瀬の爺ちゃんが答えた。
「大人になるための儀式なんだよ……」
そう言って、爺ちゃんとマヤさんの顔を交互に見つめて笑いながら話を続けた。
「中学一年生の夏休みは、子供のままでいられる最後の夏休みだ。夏休みを境に子供達は中学生らしく変わっていくだろ?
……親子揃ってグレ出したのは中学一年の二学期からだったよな?」
爺ちゃんとマヤさんの事らしく、婆ちゃん二人が大爆笑をした。
子供のままでいられる最後の夏休み。
大人になるための儀式………
百瀬の爺ちゃんの言葉が、僕の頭の中で何度も反復した。
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