お山の神さま

Ⅰ

学校中に終業の鐘が鳴り響いた。

明日からは待ちに待った夏休み。

中学生になって最初の夏休みである。

僕はいそいそと席を立つと彩花(サヤカ)に声を掛けた。

「彩花、今夜はウチでバーベキューだって」

「うん。聞いてる。
　今朝、マヤさんが家に言いに来たよ」

マヤと言うのは宮坂麻耶、三十五歳。僕の母親である。

マヤさんは、息子である僕から見ても綺麗な人だけど、金髪でタトゥ有り。僕達の住む、この山里では、あまりに目立ちすぎるPUNKな人だ。

「マヤさん、ずいぶん張り切ってたけど、私も何か手伝う事あるのかな？」

クスリと笑いながら彩花が言った。

(カ…カワイイ。彩花、可愛すぎ！)

彩花と出会って三年。

家も隣同士。

毎日顔を合わせる彩花の笑顔に、僕は未だにトキメキを感じている。