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 翌日   河童淵のダイブは正午からだった。 ぼく、彩花、陽子の三人は十一時になると百瀬の爺ちゃんに連れられて、お山の神さまのもとへ参拝に訪れた。 お山の神さまと言うのは、河童淵の横にある百瀬家の私道を更に十分程登り、私道の終着点にある古い小さな御堂である。 森の中にひっそりと佇むように建つ御堂。 周囲を木立に囲まれ薄暗く、辺りは苔むしている。 ここまでは、たまに村の者が訪れるものの、この先は『曼荼羅の森』と呼ばれている道さえ無い深い森が広がっていて、この森に入る者は皆無と言ってもよかった。 御堂の前には一体のお地蔵さまが鎮座している。 このお地蔵さまの頭部には髪の毛があり、頭頂部分の髪の毛が無い事から河童地蔵と呼ばれていた。 「みんなは、お山の神さまの事をどれぐらい知ってるかな?」 そう言いながら百瀬の爺ちゃんが御堂の扉を開けた。 御堂の中は三畳程の広さで、御神体として祀られているのは西瓜ぐらいの大きさの水晶の原石だった。 秋祭りでは村の者が皆で参拝に訪れる為に、僕達三人もこの御神体を見たことはあったが、このお山の神さまが何の神さまで、どのようないわれがあるのかは全く知らない。 僕達が無言なので百瀬の爺ちゃんが説明をしてくれた。
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