第1話【求婚】プロポーズは突然に。

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週末の、アフターファイブ。 けっこうな値段がするにもかかわらず、ホテルの展望レストランは、大勢の客で賑わっていた。 ほとんどが、私たちのようなカップルだ。 微かに流れる、洗練されたBGM。 適度に落とされたシャンデリアの明かりの下。 二人掛けの丸テーブルには、白いテーブルクロス。 ディナーを一通り平らげた後のテーブルの上にあるのは、ワイングラスとチーズ類が乗ったおつまみの皿。 窓の外には、まだ当分眠りにつきそうもない、夜の町の灯りが、星空のように瞬いている。 フルコースの料理で、お腹もいっぱいだし、ワインも美味しい。 たまには、こういう贅沢もいいものね。 なんて、おごって貰っておいて良いご身分な感慨にひたっていたら、今日の招待主様が、ニコニコ笑顔で爆弾発言を投下しなさった。 「なあ、亜弓。もうそろそろ、結婚を視野に入れないか?」 「へ?」 予想外の。 ううん。 予想はしていたけど、あえて想像しないようにしていたこの事態に、私は実に間抜けな声を上げた。
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