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小さなこどもの喋り声、
主婦らしき人の話し声、
売り込みをしているらしいおじさんの声、
すべて、ここ数年の間に聞き慣れた筈なのに偶にものすごく場違いな気がしてくるんだ。
本来ならここにいたのはあの子で、ボクはここにいない筈だった。
だけど、今ここにいるのはボクであの子はここにいない。
それは紛れもない現実。
だけど、現実味がないのは、
あの子が自ら空へと翔び立って行った。
きっとボクがそれを信じきれてないから…
「ねぇねぇ!!」
服を引っ張っった子は、大きな碧眼でボクを捉える真っ白いワンピ-スに金糸を踊らせたボクより小さな女の子。
その子が視界に入った時、不意に涙が零れそうになった。
あの子によく似た容姿をした女の子がそこにいたんだ…
「ん?」
涙が零れない様に微笑んで見せれば、女の子は小首を傾げて見せた。
「お兄ちゃんどうしたの?」
限界だった。
ボクの瞳からとめどめとなく溢れる涙に彼女は驚いてそれから、背伸びをしてボクの頭を撫でてくれた。
その小さな手はひどく安心できて…
あの子とよく似ていたからなのか、それとも違う理由なのかはわかんないけどボクはここにいていいんだって。
確かにそう思えた。
「お兄ちゃん悪い人にいじめられたの?
それならリンがね、悪い人倒してあげる!」
そう言ってくれた女の子、リンちゃんの仕草があまりにもアンバランスで思わず笑ってしまった。
「ありがとう。大丈夫だよ」
「リンが元気の出るところに連れて行ってあげる!!」
ボクの手を掴んで走りだしたリンちゃん。
大丈夫だって言ったのに聞いてくれないみたい。
こんなところもあの子そっくりだ。
そんなリンちゃんが連れてきてくれたのは
「わぁ…」
「お兄ちゃんも知ってるの?」
リンちゃんは嬉しそうに笑って中に走って行ったけど、ボクは入り口で動くことができなかった。
ここは、この公園はあの子があの日誘っていた公園だった。
あの日、ボクが無理にでもあの子とここに来てたならあの子はまだここにいたのかな?
もしもなんて考えても叶いっこ無いなんて分かってるけど…
どうしようもない後悔がボクの頭の中を渦巻く。
そもそもなんであの子は翔んで行っちゃったんだろう…
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