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「ったく……何年経ったと思っているのよ? いいかげん忘れなさいってば、諦めが悪いやつめっ」
一人ごちって、テレビの画面にぼうっと視線を走らせる。
伊藤君は、大学を卒業して体育の教師になったと、いとこの浩二から聞いていた。
何でも、母校でサッカーの顧問をしているっていうから、彼らしい。
今も、きっと、あの頃と変わらない真剣な眼差しで、ボールを追っているんだろう。
感傷めいた思いに浸りながら、グビリと一口缶ビールを口に含んだ、その時。
テレビの中で、緑のグランドを縦横無尽にボールを蹴り出していく一人の選手の姿がアップになった。
青いユニフォームが、風のようにグランドを駆け抜けて行く。
「えっ……?」
見覚えのあるその風貌に、思わず鼓動がドキンを大きく跳ね上がる。
ま、まさか……?
そんなはずはない。
だって、伊藤君は、母校の体育教師になったって――。
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