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III
家。我が家。自室。
冬杜とは公園を突っ切る時に別れた。
家が逆方向だったりするから。
僕は寛ぎながらも考えるのは、琴吹さんだ。
別に一目惚れとか、そんなんじゃない。
やはり、何処か異様な雰囲気と、あの感覚が忘れられなかった。
それでも、勘違いと言うのが拭えないのも、また、事実。
と言うか十中八九僕の気のせい。
「お兄ちゃんご飯できたよ」
呼びにきた柚子ちゃんに軽く返事をしつつ、この事は棚上げにしようと記憶の端においやっておいた。
2階の自室から、1階のリビングに移動すると、両親も、夜子ちゃんも見当たらない。
帰って来ていないだけか。
「なァ、柚子ちゃん。夜子ちゃんはどうした?」
「ん?夜子ちゃんは、あれだよ、依頼中」
あぁ、人助け部か。
この妹達、双子ちゃん達は、ボランティアのように人の頼みを聞く部活動をしてたんだったな。
遊びだよ、遊び。なんて言ってたけど、規模で言うと今はもう遊びではないんだろうと予測する。
祇園と言う珍しい名字のこともあり、中学生からはヒーロー扱い。
コイツらも満更ではないのだろう。
「ところで、その依頼って、どんなことやるんだ?」
「うーん、そうだね、恋愛相談から揉め事まで多岐に渡って遊んでるよ?」
あ、遊びなんだ。
まだその範疇なのか。
「もう規模は遊びだなんて言ってられないだろ?」
「いやいや、お兄ちゃん。たしかに有名人レベルな知名度だよ。でも有名人じゃない。ならば遊び以外の何物でもないよ。他人の役に立てるのが気持ち良いのではなく、自分の万能感が気持ち良い、なんだよ」
本当に黒いな、柚子ちゃん。
見た目には騙されたらいけないくらいにきついこと言ってる。
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