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不意に。
唐突に。
暫し見いっていた僕の視界に何かが入る。
銀に鈍く光り、先端は鋭い。
それが、右目スレスレのところにまで来ている。
それがカッターだと言うことも、琴吹さんが僕に刃を向けていることも、気がつくのに数秒を有した。
なんて早業。
場違いにもそう感じた。
「今見たことを誰かに告げた瞬間、貴方を殺すわよ。口外しないと誓える?ちなみにこれ、自殺道具のお気に入りよ」
カッター突きつけて何をいってやがる。
ただ、目が本気だと告げている。
髪が靡かなかったことを誰かに言ったところで信じる奴なんて一人もいないだろう。
冬杜すら、信じることはないと思える。
無言は不味いと思い、ゆっくりと僅かにだが縦に頷いて見せる。
すると満足そうに手を引っ込め、僕はようやく安堵を手にするのだった。
「では、今度こそ、さいなら」
投げやりか最後!!
テキトーに言って歩いて去っていってしまう。
気がつけば、琴吹さんの髪は風に揺れていた。
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