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パタパタ駆ける音が遠のく。
すっかり静まった空間には時計の針の動く音が響く。
話の流れで冬杜に頼ってしまったけど、琴吹さんが話を聞いてくれるのか不安なところだ。
そもそも、死人としか話せないようなニュアンスの事を言っていたじゃないか。
本当に何者なんだ。
そんな疑問は浮かんでは消える。
雪のように一瞬でフワッと。
1日にも満たない時間しか関わってなく、素性も知らなく、何も知らない。
そんな人のことを考えたところで答えは出ない、だから考えることを止めにした。
なにもなく手持ちぶたさなので、勉強でもしておくとしよう。
教科書にノートを取りだし、机に広げる。
何も感じることなく。
黙々と。淡々と。
シャーペンを動かし続ける。
いくらか集中をしていると、突然ドアが開く。
ほぼ反射で音の方に顔を向けると、冬杜。
違う人じゃなくて心なしかホッとした。
「お待たせしちゃったね祇園君」
「いやいや、それほど待ってないさ。それより話は?」
きっと無理だろう。
慰めの言葉を用意しておく。
「うん、連れてきたよ」
「やっぱり無理だったか、いやいいんだ気にするなぁァァ!?」
何故だ。
どうして。
え?
なになに、どういうこと?
冬杜に続いて教室に入ってくるのは、紛れもなく琴吹さん。
僕の時なんて近づくことすら、話すことすらできなかったのに。
そんな僕の心情なんて、そこのけホイホイ、と気にもせずこちらに歩いてきて近くの席に座った。
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