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「ならウチは帰るよ。また明日ね、祗園君、琴吹さん」
「さようなら」
「本当、悪いな冬杜。また明日」
冬杜は笑顔で此方に手を振って、教室から姿を消した。
アイツの足跡が遠ざかり、しんと静まる教室は何処か重たい空気が流れる
「それでなにかしら」
「あぁ、お前の髪のことなんだ………けど」
恐ろしいことに音もなく突如視界は銀に包まれ、僕は目を見開く。
心臓が速く運動すると同時に、カッターを突き付けられているのを理解した。
「けど、の続きはなに?貴方もしかして私と同じ自殺志願者?」
「い、いや、違う」
情けないが震える声は抑えられず、動揺とかなにやら色々漏れそうになりながらも意見を口にする。
我ながら勇者だと思う。誉めてほしいくらい。
「琴吹さんの体質、治せるかもしれない奴を一人知ってる」
効果はあったのか、体をピクリと震わせて訝しげな眼差しを寄越してくる。
それも当然だろう。
疑うにしても何にしても、話を聞いてくれたのならば後は
「教えるからカッターを仕舞ってくれ」
ゆっくりと刃物が遠退いていく。
よかったぁ。本当によかった。
久し振りに死ぬかと思った。
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