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「……貴方は何が目的なの。メリットなんてないでしょう」
「メリットはないな。でも苦しんでるのはわかるんだ。僕がそうだった」
平々凡々な僕が、特出した才能を願った僕が
変な奇病のようなたちの悪い才能と言うには生易しいと感じるような才能が顕れた僕が
あのときは死にたくなるくらいに苦しくて、誰かに助けを求めたいのにそれもできない
そんな経験をしたから。
僕は見過ごせない。
たとえカッターナイフを突き付けられても、どんなに脅されても。
「貴方も同じ経験を?」
「僕はまた別だ。ある意味、琴吹さんのより酷い。琴吹さんは髪が時々動かなくなる、きっと慣性が関係してると思う。僕が経験したのは、目があった全てを石に変えるなんてこと」
信じてもらうためには自分の情報を開示しなくてはならない。
それは理解できていたとしても抵抗があるのが人間だ。
同情や蔑み、嫌悪、そんな感情を持たれると思うと言えないことのほうが多い。
でも何故だろう、琴吹さんには何も抵抗なく言えた。
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