1人が本棚に入れています
本棚に追加
「わかったわ。全ておいていきましょう」
そうして出てきたのはポケットから、カッターナイフ一本。
コンパス1つ。
三ミリ芯のシャーペン(芯が出るとこ尖ってるバージョン)
「……え、これだけ?」
「ごめんなさい、これは油断。次からは種類を揃えるわ。だってこんな抜き打ち検査があると思わないじゃない。……抜かったわ」
別に審査してねぇよ。
なんで悔しそうなんだよこの人。
「まぁ、いいや、入るぞ」
ドアを開けると、そこは異世界に繋がるわけもなく、なんのへんてつもない部室。
ソファがあって、机があって、天体望遠鏡があって、家庭用プラネタリウムがあって。
そのソファに凭れるようにして眠っているのは、天文部唯一の部員。
「おい、林檎起きろ」
そう、林檎林 林檎─リンゴバヤシ リンゴ─
アッシュグレーの髪の毛を右から左に向かうほど長くなるというアシンメトリーな髪型の男。
肌が白すぎて、顔立ちも綺麗なために女の子に見えるが男。
そんな林檎は欠伸をしながら顔だけを此方に向けて、本当は寝てなかったのではなかろうか、と疑いたくなるくらい普通に話をしだす。
「おぉ、バカか。なんでお前なんかが美女を連れてんだよ、運を使い果たしたか、騙されたか。世の中甘くねーぞ」
「才能に取りつかれてる」
僕はただ一言告げる。
突っ込みたいが我慢した。
自尊心強いみたい僕。
最初のコメントを投稿しよう!