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あぁ、なんて困り顔をしてるんだい冬杜のやつは。
可愛らしいな、こんちきしょう。
「祇園君、オーイ」
そろそろ、もういいやコイツなんてなりそうだから返そう。
うん、そうしよう。
「冬杜だから問題ないだろ?」
「……うーん、確かにそうかな。問題どころか何もない」
そう言うってラブレターを返してくれる。
電気もついていない、太陽の光だけが頼りのこの教室に、隣から声が響く。
「あれから目はなんともないの?」
「あぁ、なんともない。あの目には戻ってないよ」
冬杜 雫。
頭が良く、質問したら全て答えてくれるような、そんな奴。
普通だったら知り得ない事も知ってるコイツは、やはりどこか人らしくない。
僕の目────メデューサのことも知っている。
そして、僕は冬杜の才能のことを知っている。
あのときは最底な体調で最悪な気分で最高に嫌な事件だった。
でも、ソレを切っ掛けに今こうして話しているのだから、出会いの運だけは最上だったのだろう。
そこからコイツのなんでも知っているという恐ろしい事を知ったのだけど……。
頭に当時の事が思いだされていると、冬杜の声でかき消され、現実に呼び戻される。
「もうそろそろ時間じゃない?」
腕時計をコツコツと細い指で叩いてる。
たしかに書かれている時間はもうすぐだ。
「なら僕は行く。またな冬杜」
「うん。また明日」
僕は呼び出された屋上へ向かうのだった。
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