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「じゃあ俺仕事行ってくっからさ、シアンも学校遅れんなよ?」
日がのぼって随分立ち、洗濯と掃除を済ませた私達は服を着替えて荷物を持ち、それぞれの場所へと赴く。
幼い頃から何かをまなぶことが好きだった私を、リームは朝から夜遅くまで働いて学校に行かせてくれていた。
街の人々の援助もあって学校に行けるのは嬉しいのだが、少し罪悪感もある。
私が学校に行くせいでリームや街の人々にかける負担は少なからず上がってしまう。
………まぁそれを言った時には珍しいくらいに怒られたのだが。
気を付けて学校に行けよと言いつつ私を心配そうに見るリームに「大丈夫だ」と告げ見送ってから鞄を手に家を出る。
そして街へと続く道をゆっくりと踏みしめながら学校へと向かった。
***************
学校に着くと教室に入り自分の席に着く。
私が入ってきて静かになる教室内にはもう慣れっこだ。
親がいないというくらいで敬遠し、汚物を見るような目を向けてきながらヒソヒソと囁きあうクラスメイトを無視し、教科書を開くと昨日の復習をするように要点を脳内で纏めていく。
それからすぐに授業がはじまり、何事もなくお昼になる。
そしてまた授業がはじまり夕方だ。
いつものことだ、何もおかしくはない。
その日最後の授業が終わるベルが鳴り、そそくさと道具を鞄に詰めて学校を出ていく。
そしてリームの働いている木彫り店に少しだけ顔を出し、帰るのが日課になっていた。
「あぁシアンちゃん、学校は終わったのかい?」
「はい、おかげさまで
街の皆さんには感謝してます」
店を覗くとどうやらリームは裏方をやっているらしく、カウンターには女将さんが一人佇んでいた。
こちらを見て微笑みながら声をかけてくれた女将さんに思わず表情を緩めながら返事をすれば近付いていく。
女将さんが言うにはリームは今新しく彫刻を彫っているらしい。
昔から手先の器用だったアイツは此処の親父さんに見込まれて彫刻士になったのだ。
おかげでアイツの部屋のほとんどは木彫りに埋め尽くされているのだが。
「シアンちゃん、兄ちゃんはもう少しで休憩だからお茶でも飲んでかないかい?」
「………じゃあ、お言葉に甘えて」
女将さんの好意に甘えてそう言えば、私は店の奥へと入っていった。
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