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「信じてもらえたかな」
「いえ、ええ、まったくでございます。まさか神様とは思いもしませんで。どうかこれまでの非礼をお許しください」
「いいのだよ。君の気持ちは分からんでもない」
「申し訳ございません。しかし、何ゆえに茶壺のお姿をしておられるのでしょう」
「うん、もっともな疑問だ。わたしたちのような神と呼ばれる者は、人前に姿をさらすことなど滅多にない」
「はい」
「しかし、やむを得ず人間と接触する際には、こうして何かしらに姿を変えなければいけないのだよ。これは、わたしたちの世界での決まりごとさ」
「はあ、そうだったのですか」
「なぜ茶壺に化けたのか、と君は聞きたいのだったね。わたしがこの姿を選んだのは、ちょっとした遊び心みたいなもので、いわば気まぐれなのさ。茶壺が話しかけてくるなんて、おかしくて面白いだろう」
「はい、私も驚きました」
男は次々に舞い込んでくる話の内容に、相づちを打つのがやっと、という様相だった。
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