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声の主をさがしてちらちらと辺りを見回すと、なにやら見慣れないものが目にうつった。
庭の端にずっしりと根を下ろした木々の間、男には身に覚えのない茶壺がそこにはあった。
「はて、茶壺など持っていただろうか。わたしに茶道の心得はないのだが、もしか客人の忘れものだろうか」
男は誰に言うでもなくつぶやいた。
「ようやく気がついたかね。鈍感な奴だな君は」
驚いたことに声の主というのはこの茶壺だった。
「これは奇妙だ。人語をあやつる茶壺など聞いたこともない。貴様、いったい何者であるか」
男は少し後ずさりをしながらも、どうにか相手を問い質した。
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