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「君はペルソナというのを知っているかい」
「仮面のことだろう。それぐらい分かるさ」
「そう、仮面だね。でも今回は目に見えない仮面のことなんだ」
「ほう、目に見えない仮面があるのかね」
そこから奴は、いつになく長々と饒舌に語り始めた。
「たとえばここに1人の男がいたとしよう」
「この男は学校で教鞭をとっている。つまり、学校では教師という仮面を被るわけだ」
「仕事が終われば当然ながら男は家へと帰っていく。家に着くと妻から、おかえりなさい、とあたたかい声をかけてもらう。ここで男は教師から夫となる。夫の仮面を被るんだね」
「妻の声に遅れて子供たちが、お父さんおかえり、と走り寄ってくる。すると夫の仮面を残しつつ、男は父親の仮面も着けるのさ。分かるかい」
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