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「なるほど、その仮面とやらは人間が持つそれぞれの顔というわけか」
影の話にようやく私は返答する。
「そう、人はみんな仮面をかぶって生きている。君だって昼間は八百屋の仮面をかぶっているだろう」
「そうだな。それでその話が何だというんだね」
「何も。こういう話があるよ、というだけさ」
「何だそれは」
「何だろうね」
影はクスクス笑っていた。
そこからしばらくして奴はまた明け方とともに帰っていった。
そして私は床につく。
いつにも増してひどくなった咳を枕に。
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