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「少し、昔話を聞かせてあげよう」
せんせいは急に話し始めた。
わたしは今、このせんせいとちょっとした旅をしている。
話せば長くなるけれど、身寄りのなかったわたしのことを、せんせいは快く受け入れてくださり、ここまで育てていただいた。
わたしにとってせんせいは親同然ではある。
だけれど、けしてお父さんとは呼びはしない。
血のつながりが無いというのももちろんあるが、それだけが理由ではないのだ。
実の子のように愛情を込めて育ててはくださったが、それ以上に多くのことをわたしは学ばせていただいている。
わたしにしてみれば、せんせいは親ではなく師なのだ。
だからこそ、お父さんではなく、師(せんせい)とわたしは呼んでいる。
そんなせんせいと、ひょんなことから旅をすることになり、今はこの旅館に身を寄せている。
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