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「ねえ、カイン・ナイトさんはどうして『先見者』なんてやっているの?」
三ヶ月ぶりに私の元を訪れてきたミシェルは、意を決したように琥珀色の瞳で力強く私を見据えてきた。普段は楽しげに跳ねている瞳の奥の光がまったく揺れることがない。それがまるでこの子の決意の強さを表しているように感じた。もう、はぐらかすことはやめにしよう。そう思うことができる輝きだ。
「ミシェル。君は何歳になったの?」
「え? えっとね、境の山が白くなったのを見たのは覚えているのが九回で、覚えていないのが三回だから……たぶん十二歳かなあ。でも、それがどうかしたの? カインさん?」
突然年齢を尋ねられたことに驚いたのか、ミシェルは非常に整っているが、まだ小さくあどけなさの残る顔を戸惑わせている。先ほどの凛とした表情はやはり崩れてしまったようだ。……いや、そうでもない。その琥珀の中に閉じ込められた彼女の思いだけは揺らいでいない。
「そうだね。ミシェル、君は私たちの数え方で言えば2043年に生まれて、そして今年は2055年。だから、ミシェルは十二歳だね」
「むぅ。カインさんの言うその『西暦』っていう数え方はやっぱりよくわかんないよ」
「そうだね。君たちにはそもそも『時間』というものが必要ないからね」
ごめんね。私はそう言いながら彼女のさらりとしたブロンドヘアーを手で梳いた。太陽の光を弾き返している波面のような髪の毛だ。彼女はちょっと頬を染めながら照れ笑いをしている。だいぶガタがきてしまっている戸と壁の隙間から木漏れ日のように光が差し込んでくる。
そろそろ日も沈む頃だろうか。
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