30人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前には自分と顔立ちのよく似た美しい少女。
しかし、その美しい顔に表情と呼ばれるものはない。
「――――ということです。
以上が報告です。」
声音からは心が読み取れない。
「そう。分かりました。
下がっていいわ。」
「はい。失礼しま、あっ。」
彼女が退室しようとしたとき、彼女の袖の釦が落ちた。
それは部屋の端にある本棚まで転がっていき止まる。
少女は追いかけて釦を手に取る
その手が僅かに棚に当たり、振動をよんだ。
ガシャン
「あ、ごめんなさい。
おばあちゃん。」
棚から四角い缶の箱が落ちた。
彼女の顔に少しだけ表情がのる
「いいのよ。
片しておくからもういいわ。」
やらなくていいという旨を伝えると、少女―――――孫娘は此方を振り向きながらも退室していった。
少女が出て行った後、私は缶の元へと歩み寄る。
そっと拾い上げ、また先程まで座っていた椅子に腰掛けた。
「何年ぶりに、なるのかしら…」
最初のコメントを投稿しよう!