こえ

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「仮に私がいなかったとしても、皆川なら必ず上手くやっていけます。 さ、離して下さい。 そろそろあがりましょう。」 「うん…はっ! あたし来ただけでなにもしてないや。意味ねー」 皆川が離した頃にはもう翳りはなくなっている。 爽和は手に持っていた木刀は元の位置に立てかけ、皆川と共に着替えに行った。 ************ 「じゃーな、爽和!」 遠くには大きく手を振っている皆川が見える。 「また明日。」 爽和も小さく手を振り返し帰路に就いた。 帰り道はまだ薄暗いぐらいで、完全な闇ではない。 流石に受験を近くに控え、どこの部活も既に三年は引退している。 だから放課後の部活はなく、帰りも早のだ。 何時もならば放課後の部活がないと機嫌の悪くなる爽和だが、今日は無いにも関わらず珍しく機嫌が良い。 「ふふっ、今日の課題は楽しみで仕方がないですね…」 ぽそりと呟かれた声音からも、機嫌の良さは伺えた。 爽和の言う課題とは、即ち学校で出された歴史の課題の事である。
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