お慕い申し上げておりました

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何に対してかは分からないが、言いたいことが動揺しすぎて言葉にならない事は分かった。 仕方なしに彼が指差す方に目線を向けると 「ひと…だな」 確かに川に人がいた。 正確には倒れていた。 それも流されてきて、偶々引っかかっているように見える。 背の高い青年は急いで川の中に入っていく。 もう一人は、おろおろしながら川辺で様子を見ている。 青年は水をかき分け近づき、川辺まで抱き上げた。 体は、とても冷たかった。 それも、その筈。 季節は夏に向かっているとはいえ、川遊びが出きるほど温かくもない。 意識はないが、幸いな事に浅くではあるが息はしていた。 「どっ、どうするの?この……女……男の人?」 その人を一瞥し、抱き上げた青年は一言だけ告げた。 「屯所に連れて行く。」 そこからは二人で走って"屯所"へ帰って行った。
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