お慕い申し上げておりました

8/39
前へ
/239ページ
次へ
「じゃあ次、俺? 俺は藤堂平助。よろしくね。 あ、俺さ、よく可愛いとか犬みたいって言われるけど本当は強いんだからな!」 大きな目に、ぱっちり二重。 確かに可愛い顔立ちだ。 しかし茶色がかった短髪と、強い意志と活発さの伺える目が男の子だと主張していた。 はつらつさとか小さいのによく動く所とかは、彼を犬みたいと言う人達にとても共感するものがある。 が、なぜ敢えて言う必要があっただろうか? 爽和の顔を見た永倉は説明してやる。 「お前さっき、こいつの事犬と間違えて抱きついただろ?」 「さっき…」 さっき、というのは起きた後の事だろう。 しかし、朧気にしか思い出すことができない。 覚えているのは、大好きだったあの子がいたことだけ。 と言うことは、自分は彼藤堂平助を見て間違えたということ。 「えっと…私、寝起きが悪いみたいでして、寝ぼけてやっちゃったことは覚えてないんです。 ごめんなさい。 死んでしまった愛犬を思い出したみたいです。」 あの子は、ずっと側にいてくれた。一番安らげる場所だった。
/239ページ

最初のコメントを投稿しよう!

151人が本棚に入れています
本棚に追加