お慕い申し上げておりました

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今の格好は剣道の胴着。 学校でも空き時間は竹刀を振るっていて、帰宅後もするつもりだから胴着のまま帰宅していた。 これのせいで男だと思われたのかも、など思う。 が今その胴着は、川に倒れていたため、びしょ濡れの状態。 しかし着替えがあるはずもなく、困り果てていると山南が助け船を出した。 「平助。 彼に胴着を貸してあげてはくれませんか?」 「え、俺?」 「お前以外に誰があいつに貸せるような胴着もってんだよ。」 永倉が冷静につっこむと、藤堂は辺りを見回しため息をつく。 「はぁ…ついてきて。 俺の貸したげるから。」 「あの…いやなら良いんです。 別にこのままでも大丈夫といえば大丈夫ですから。」 藤堂の溜め息を違う意味で捉え、辞退の言葉をかける。 しかし、藤堂は首を振る。 「違う。いいから来て。 土方さん。俺ら、先行くから道場でいい?」 「ああ。」 土方の返事を受けて藤堂は部屋を出る。 爽和は室内に向かい一礼し、慌ててその後を追いかけた。 二人がいなくなり、空気はまた緊張したものに戻る。 「土方くん。 彼は怪しい存在ではないと思うのですが。 ここに身を置かせる必要がありましたか?」
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