お慕い申し上げておりました

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「あぁ。やりすぎるなよ。」 土方は仕方なしにといった風に許可する。 力を試すことは怪しい人間、引いては長州の間者かどうか見極めるには一番の方法だ。 そうであるのなら、それなりの力を有しているはず。 「はーい。 じゃあ僕も着替えてきます。」 そう言って沖田は退室した。 「土方さん、あいつ…朝日川の事疑ってるんだろ? でも俺、そんな風には見えねぇんだけど…」 それを期に、おずおずと口を開いて原田は土方を見つめた。 「佐之。お前はやけにあいつの肩を持つな。 なぜそう思う? 普通誰もが嫌がる場所に入ると自らの意思で決めた。 挙げ句、ありがとうございます、だと? おかしいだろ。」 土方とて始めは一応問い質しただけで、そこまで怪しいと思っていたわけではない。 しかし鎌を掛けたことで、藪から蛇がでた。 「なぜって言われてもあれなんだけどよ… 間者だったとして川に倒れてるって可笑しくないか? 俺らの中に違和感なく入り込む事が目的だったとしても、浪士組の誰かが拾ってくれるなんて分からないし、その前に違う人に拾われるかもしれない。 倒れてるのだって、絶対演技とかじゃなかった。 平助がそう言ってた。 違うか、一?」
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