お慕い申し上げておりました

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爽和は中段に構えた。 沖田は同じ様に、しかし少しだけ切っ先を上げて構えた。 二人が構えたのを確認し、藤堂の合図がかかる。 「始め!」 二人ともの纏う空気ががらりと変わった。 沖田は殺伐としたものに、対し爽和は不思議なほど落ち着いたものに変わる。 深く息を吸い、はく。 いつも、緊張を感じるはずの試合でも、その手に竹刀を握ればどんなときよりも心落ち着く。 私が私でいられるのは今だけ。 「長いな…」 ぼそりと呟いたのは斎藤。 しかし誰もが心の内では同じことを思っていた。 沖田と爽和、二人は構えからまだ動きを見せていない。 それほどにお互い隙がないのだ 「…………」 じっくり沖田を見つめる爽和。 一方、沖田は舌打ちしたい気持ちにかられていた。 大した力量などもっていないと思っていたいた相手は、なかなか出来るらしいことが察せられた。 それは雰囲気や様子を伺っていて感じらたこと。 しかし、苛々する原因は他にあった。
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