お慕い申し上げておりました

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一度大きく弾き、沖田と間合いをとる。 そうして、木刀を右手から左手へ持ち替える。 それを見た沖田は更に苛烈な空気を纏わせた。 「本当に… なめられては、困るなぁっ!」 真っ直ぐに爽和の元へ突っ込んでくる。 余程頭に血が上ったのか、剣筋は容易に読めた。 「逆、です。」 しんとなった道場に爽和の声だけが広がる。 それに弾かれるように藤堂が終わりを告げた。 「し…勝者、朝日川!」 爽和は沖田の腹の辺りにぴたりと添えられていた木刀を下ろす。 「ありがとうございました。」 未だ茫然としている沖田に一礼し、目線を他の人達に移した。 全員が驚きの顔をしている。 それもそのはず、いくら沖田が相手を弱くみていて気を抜いていたとしても、負けるなど見たことがなかったからだ。 「どうでしたか?」 爽和が尋ねると、はっとした山南は柔らかく笑んだ。 「素晴らしいです。 あなたは才能があります。 勿論、努力も大きかったでしょうが。」 最後の言葉に含みをもたせた。
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