お慕い申し上げておりました

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試合した後は藤堂に連れられ部屋を見た。 質素ながらきちんとした夕食を皆と一緒に食べた。 その間は何も考えなくて良い。 だけど、いつまでも現実から目を逸らしていていいということはないと、神様は私に教えてくれるつもりらしい。 「朝日川。」 夕食を終え、部屋に戻ろうとしていた時に廊下で声をかけられた。 その人は私が好きな―――― 「斎藤様!」 その呼び方に眉を顰めた斎藤。 「様、はやめろ。」 「いいえ。お気になさらず。」 頑として変えるつもりがないらしいことが分かった斎藤は大きく溜め息をつく。 しかし次には真剣な目で爽和をじっと見つめる。 「話がある。」 そう言って背を向けてどこかへ歩いて行く。 ついてこい、という意味に解釈し爽和も少し離れて後ろをついていく。 少し歩くと全く人気のないところにでた。 そこで斎藤は足を止め、振り返る。それにならい爽和も足を止める。 「お前は何故、ここに留まることを決めた。」 漠然とした質問で斎藤の真意が爽和には掴めない。
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