お慕い申し上げておりました

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「それは…」 ただ行く宛がなくて、憧れの彼らと一緒にいたい。 それだけの単純にして明快な動機だった。 しかし、それを口にすることはできない。 憧れ、というところで必ず答えにつまる。 「俺はお前を疑っている。」 体が動かなくなる。 「怪しいこと、この上ない。 お前は『最後まで力を捧げる』そう言った。 まるで、最後を知っているような口振りだ。 それにお前の剣の腕もだ。」 斎藤の言葉に心臓が大きく跳ね上がった。 そんな爽和の心中などはお構いなしに斎藤は爽和に近付いてくる。 それが何だか怖くて、この人には全部見透かされてしまいそうで、自然と後退しまう。 ついには壁に背があたり、それ以上は下がれなくなった。 「っ…!」 「何故、下がる。 やましいことがあるからか?」 一歩。 「嘘をついているからか?」 また一歩。 「隠しているからか?」 腕を掴まれ動けなくなり、右に目線をやれば、顔の直ぐ横には大きな手が。 顔は息がかかるほどに近い。
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