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だが気付いたことがあった。
「お前は寂しくないのか?」
見たところまだまだ子供のように見受けられる。
「寂しくは…ないですよ。
向こうに思い残すことなんて僅かにしかありませでした。
それですらも、確かなものではなかったですから。
今だってあまり、戻りたいとは思っていません。
むしろ、こっちの方がいいです
同じ信じてもらえない生活なら、大好きな斎藤様や憧れの皆といられる方がましです。
ただ…」
そこで言葉を切ると、切なそうに笑った。
「もし私を思ってくれてた人がいたら…悲しんでくれてるかなって思っただけです。」
まぁいないと思いますけど、と付け足した。
「思ってくれる人がいないから悲しいのか?」
「へ…?」
爽和は何のことか分かっていないようだ。
斎藤は頬に手を伸ばす。
「泣く程、つらかったのだろう?
思ってもらえないこと、信じてもらえないことが。」
そして親指で透明な雫を拭う。
「っ!ごめん、なさい!
もう泣かないって、涙出ないと思ってたんですけど…」
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