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眩しい朝日を背に、廊下を気だるげに歩く青年、藤堂平助。
屯所としている八木邸のながーい廊下を歩いていた。
そう、ただ歩いていただけ。
それなのに誰がこんな光景を目にすると予測できただろうか。
開け放たれた障子から未知の世界、いや、知らない方がよかった世界が晒されていた。
彼は己自身の目を疑う。
待って待って待って待って!
え、俺、どうすればいいの?
見なかった事にすればいいの?
見なかったことにすればいいなどと思いかながらも、足は地面に縫い止められたかのように、その場から一歩も動いてはくれない。
とりあえず。
「そぉーじぃぃ!はじめがぁー!」
叫びながら廊下を駆けた。
「待て、平助!」
その後ろを部屋から急ぎ飛び出した斎藤が追いかける。
制止をかけるも一向に止まる様子を見せない藤堂に、斎藤は思わず舌打ちをした。
何故こうなった?
何故起き抜けに平助を追いかけなければならない?
斎藤は走りながら、四半刻前に思いを馳せた―――――――
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