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「平助、止まれ。話を聞けっ」
斎藤と藤堂の差は大分詰まってきた。
「やだよ。
俺、一がそんな不純な人間だなんて思ってなかった!」
誤解の種を撒き散らすような発言を大声でするものだから、普段はそんなに感情を露わにしない斎藤も限界を迎えた。
「だからっ…」
斎藤の手が藤堂の襟にかかる。
「違うと言っているだろう!」
それを思い切り引っ張るとぐえっと言いながら漸く止まった。
そんな藤堂を廊下に放り落とし上から睨みつける。
「痛ぇ…ちょ、嘘!?
そんな怒んないでよ!
睨む程?!」
放り落とされた衝撃で廊下に頭をしたたか打ち付けた場所をさすりる。
酷いと思い見上げれば、今までに見たことがない睨みという新技を発動させていた斎藤と目があった。
「お前がっ…聞いた人に誤解しか与えない、ありもしないことを吹聴するような行為をしたからだ。」
「ありもしないこと?」
廊下に胡座をかき小首を傾げ見上げる。
そんな行動が斎藤の苛々を増長させているとは、恐らく気づいていない。
「不純な人間、と言った。」
「あー…
じゃあ何だったの"あれ"。」
あの光景は一週間程は忘れられないに違いない。
いや、きっと忘れない。
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