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10代の頃を思い出したのは何年ぶりだろう?
今でも思い出せば切なくなる...
「何?あたしのことスキなん?」
と...
声をかけられた
当時付き合っていた彼女とはうまくいかず
気持ちの切り替えにふと入った美容室に金髪のあのヒトは居た
ヘアカラーの前の洗髪後
僕の顔に掛けたタオルを取り顔を覗き込む
眼と眼が合った時だった
「何?あたしのこと好きなん?」
今思えばそうだったのかも知れない
いや魅かれたのは事実だった
瞳を覗かれ
変に高圧的な言葉にキョドッタのは良く覚えている
でも何と返答したのかは未だ思い出せない
その後ヘアカラーを入れる時
この店を選んだ理由を聞かれ
正直に話した
彼女とうまくいってない
彼女の父親が893で覚せい剤で逮捕された
等々言わなくて良い事まで言ってしまった
あのヒトは特に興味が有るでもなく
静かに静かに僕の情けない愚痴に耳を傾けてくれた
ヘアカラーがあっという間に終わり
洗髪も終わり同じようにタオルを取ったが
何故か眼は合わせれなかった
抵抗に近い感情でもあった
あのヒトに瞳を覗かれ嘘をつける自信は無かったのだ
ドライヤーで髪が乾くまでに
どうにか仲良くなれないかと野望を燃やしたが
ついに一言も言えず髪は乾いた
鏡の中の僕と鏡の外の僕を交互に僕を見てあのヒトは静かに囁いた
「あのね?ω君?私ならパーマをあてた方がタイプだけどどうする?」
話を繋げたいのが見透かされたのか?
それとも売り上げのためなのか?
正直分からなかった
何?僕のこと好きなん?
と僕は勝ち誇ったように笑っていった
「え?わかる?」
と笑顔で返してきた
何とも言い表せない敗北感が心を貫いた
言うがままに産まれて初めてのパーマ経験することになった
だがもう自分の事を話す気にもなれなかった
隣に居る女性をもっと知りたかったからだ
沈黙を破ったのは僕だった
あのヒト左手薬指の指輪に気がつき
浜田さんだって旦那さんとうまくいってないんじゃない?
とワザと興味が無いように言ってしまった
直ぐに返答は返ってこなかった
まずいと思いフォローを入れようと思った瞬間
「浜田さんって他人みたいで嫌!ナオちゃんって呼んで!」
と怒り交じりで言ってきた
謝ろうとすると
口をふさぐ様に
旦那と不仲
浮気もされてる
辛い
悲しい
寂しい
そこには弱々しい一人の女の子が居た
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