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眞弓は手を洗い終えて、
ハンカチを忘れているのに気づいた。
(う~~ん……ボックスに忘れちょるがねぇ。
困ったねぇ)
「あのぉ……よろしかかったら」
真弓は、目の前に差し出されたハンカチに、
「え、あぁ、助かりますがょ」
と顔を上げて、
ここが男子トイレであることも忘れて、相手の眼を見た……、
途端!
自分の意志とは全く関係なく、眼は白目を剥き出し始め、指は、
「あ、あなたは運命の人」
「あぁっ、……あなたは銀座の玉葱さん」
「失礼しま~~す」
「あ、待って下さーーーい」
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真弓はその足で、どこぞのボックスに飛び込み、
あの一連の動作を元気よく行なうのだった。
キャーーーッ!!
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ボックス内は騒然となり、
ガラーーッ!
客は一斉に飛び出した。
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飛び出た客の間を縫うようにして、眞弓は逃げた。
「何の騒ぎだーーー!」
他のボックスの客も出て来て、辺りは騒然となった。
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「あ……すみません、通して下さい。
ごめんなさいね……」
四純は客を掻き分けながら、
必死になって彼女を捜すのだったが……。
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自分達のボックスに戻り着くいた真弓は、
「どうしたの真弓先輩、何の騒ぎなの?」
閉めた引き戸に凭(もた)れれながら、
「はぁ…はぁ……
で、出たぁ」
と、言うのだった。
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