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「社長、それって何の真似ですか?」
「……あぁ、これですか。
陽子さんちょっと伺いますけど……今、巷(ちまた)では……
このような事が流行っているのですか?」
四純は、数日前銀座で起こった不思議な出来事を、改めて演じて見せた。
「ええっ!
アッカンベーですって?
今度はお尻ペンペン!?
社長、私そんなの初めて見ますよ。テレビでも観たことないしぃ。
社長、もぅ止めて下さいょ」
四純は数人の仲間と共に、小さな会社を経営している。
中古のコンピューターを、東南亜細亜向けに輸出販売しているのだ。
東南亜細亜などを旅行すると、
よく社名などを書いたままの日本車が、白昼堂々と走り過ぎるのを見掛けると、
思わず苦笑してしまう事がある。
四純たちの仕事はそのコンピューター版で、
あそこまで酷くはないにしても、
価格も安く、一般用としてはその機能を充分に満たしてくれるのだった。
「社長……
東南亜細亜行きの、航空券がgetできました」
四純は、含み笑いを浮かべながら椅子に腰を降ろした。
「はぁ…はぁ…
いろいろありがとう……陽子さん。
……で、
日程はどうなっているのですか?」
「はい、えっと……
成田を、十八日に離陸致しまして」
「あのぉ……陽子さん。
二十四日の午後には……
イヴには……帰国できますか?」
「はい。
そのお時間になら十分に間に合うかと、思いますが。
なにか?」
秘書の陽子はメモ帳を閉じると、
四純の表情をそっと窺った。
「……え、あぁ何でもありません。
……ありがとう。
あぁそれから、離婚のことなら……
もう大丈夫ですから……」
陽子は笑んで頷くと、
腕時計を覗き込みながら、時間を気にした。
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