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陽子が時間を気にするのは、
離婚してから此の方、社長の様子がどことなくおかしく映るからだった。
離婚した翌日から、手に持つ怪しげな紙袋……。
「おはようございます。
社長、ちょっとお伺い致しますけど、……これは秘書としてですよ。
毎日手にお持ちの、その紙袋はいったい何なのでしょう?」
「……あぁこれですか。
陽子さんは……何だと思いますか?」
「……さぁ」
「実は……紙袋の中身は玉葱なんですよ」
「たまねぎ……ですか?」
四純はそう言いながら紙袋を開いて見せた。
「本当だぁ」と、頷く陽子に、
疑惑を抱くような眼の配りはなくなったものの……。
でも、先ほどのパフォーマンスと言い、玉葱の入った紙袋と言い……
(なぜ、玉葱を持ち歩くのかしら、社長は?)
と、訳を知りたがる陽子にとっては、別の疑惑が沸いてくるのだった。
「……陽子さん、僕はちょっと出掛けますね」
(紙袋を手にしてそわそわしてるわねぇ。
……それにいつも同じ時刻だし)
「社長……」再度時計を覗き込んでから。
思い切って尋ねてみることにした……
「はい、分かりました。
では、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
でも、丁寧に見送る陽子には、とても言い出せそうにはなかった。
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